導入
日帰り登山に慣れてくると、「山の上で夜を明かしてみたい」「翌日は別のピークまで縦走したい」と考える人も多いはずです。テント泊縦走は日帰り登山とは装備もルールも大きく変わります。この記事では、初めてテント泊に挑戦する人が知っておくべき基本を、公的機関の一次情報も交えて整理します。
テント泊ならではのルール:幕営指定地以外でのテント設営は禁止されている
日帰り登山にはない、テント泊ならではの大前提があります。それは「どこでもテントを張っていいわけではない」ということです。
環境省は国立公園の利用マナーとして、次のように明記しています。
植生の破壊、野生動物の誘因、山火事を防ぐため、キャンプやたき火は決められた場所以外ではしないでください。
さらに秩父多摩甲斐国立公園のお知らせでは、キャンプ場以外でのテント設営について「テントの設営は、一部地域やキャンプ場等を除き、原則として自然公園法の規制対象となっている」と説明しています。
これは本州の一国立公園だけのローカルルールではありません。北海道の大雪山国立公園でも、指定地以外での幕営について明確に「Camping outside of designated campsites is prohibited.(指定野営地以外でのキャンプは禁止されています)」と案内されています。つまり、全国の国立公園に共通する原則だと考えてよいでしょう。
対策
– 目的地の山域を管轄する国立公園・山小屋・自治体のサイトで、幕営指定地(テント場)の位置と利用条件(予約要否・利用料金など)を事前に必ず確認する
– 「人が少ないから」「疲れたから」といった理由で指定地以外に無断でテントを張らない
テント泊装備の4つの柱
日帰り装備に加えて、テント泊では次の4つの装備が新たに必要になります。役割を理解してから選ぶと失敗しにくくなります。

- テント: 風雨から身を守るシェルター。稜線上の強風地帯で使うか、樹林帯中心かで求められる耐風性が変わる
- シュラフ(寝袋): 標高が上がるほど夜間の気温は下がる。季節と標高に合った対応温度のものを選ぶ
- マット: 地面からの冷え(底冷え)を防ぐ役割。断熱性能はシュラフとは別に必要
- コンロ(バーナー)・クッカー: 山小屋の食事に頼らず自炊する場合に必要。水を沸かすだけでも標高や気温の影響を受ける
装備の総重量に関する具体的な数値は情報源によって前提がバラバラなため本記事では断定しませんが、日帰りザックとは比較にならないほど重くなることは間違いありません。事前に自宅で全装備を背負ってみて、実際の重さを体感しておくことを強くおすすめします。
体力面の準備:重い荷物を背負って歩く練習をしておく
テント泊装備を背負うと、同じコースタイムでも日帰りより体力を消耗します。登山の体力づくり完全ガイドで紹介した運動強度の考え方を踏まえ、事前に荷物を背負って歩く練習をしておくと安心です。ザック自体の選び方・重心バランスについてはザックの選び方完全ガイドも参考にしてください。
計画面の準備:行動時間と水場情報に余裕を持たせる
縦走は日帰りよりも行動時間が長くなり、翌日の行程も見据えた計画が必要です。登山計画書の作り方を参考に、エスケープルートや水場の位置を事前に地図で確認しておきましょう。読図の基本は登山の読図・コンパス基礎ガイドで解説しています。
最初のテント泊はどこに行く?無理のないルート選びが最重要
初めてのテント泊で技術的難易度の高いルートに挑戦する必要はありません。登山を始めるための山の選び方や、長野県編・群馬県編で紹介した都道府県公式「山のグレーディング」は、日帰り登山だけでなくテント泊縦走のルート選びの参考にもなります。まずは体力度・技術的難易度が低めのルートで1泊2日を経験し、そこから徐々にステップアップしていくのがおすすめです。
まとめ
テント泊縦走を始めるには、「幕営指定地以外でテントを張ってはいけない」という日帰り登山にはないルールを理解すること、テント・シュラフ・マット・コンロという4つの装備の役割を知ること、そして体力・計画面で日帰りより余裕を持たせることが大切です。まずは無理のない1泊2日のルートから、テント泊デビューを楽しんでください。

