登山初心者の山の選び方|「山のグレーディング」で自分に合う1座目を見つける方法

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導入

登山に必要な装備を揃えたら、次に悩むのが「じゃあ、実際にどの山に登ればいいの?」という問題です。「初心者は低山から」とはよく言われますが、低山と言っても難易度はさまざまで、結局何を基準に選べばいいのか分からないという方は多いのではないでしょうか。

この記事では、長野県をはじめ全国の都道府県が公表している「山のグレーディング」という公式の難易度指標を使って、自分の体力・経験に合った1座目・2座目をどう選べばいいかを具体的に解説します。

「山のグレーディング」とは?

山のグレーディングとは、登山ルートごとの難易度を都道府県が統一基準で評価・公表している制度です。2014年に長野県山岳総合センターが「信州 山のグレーディング」として先駆けて公表し、その後群馬県・山梨県・静岡県・秋田県など全国の都道府県に広がりました。

このグレーディングは、登山者が「自分の力量にあった山選び」をすることで山岳遭難事故を防ぐことを目的に作られています。評価の軸は次の2つです。

  • 体力度: 1〜10段階の数値で、そのルートを歩くのにどれだけ体力(エネルギー消費)が必要かを示す
  • 技術的難易度: A〜Eの5段階で、そのルートを歩くのにどれだけの技術・能力が必要かを示す

体力度の見方:「ルート定数」という考え方

体力度は、鹿屋体育大学の山本正嘉教授が考案した「ルート(コース)定数」という計算方法をもとに算出されています。長野県山岳総合センターの資料によると、ルート定数は次の式で求められます。

ルート定数 = 1.8 × 行動時間(時間) + 0.3 × 歩行距離(km) + 10.0 × 登りの累積標高差(km) + 0.6 × 下りの累積標高差(km)

この数値に(体重+荷物の重さ)をかけると、そのルートを歩くのに必要な消費エネルギー(kcal)が計算できる、という考え方です。長野県のグレーディングでは、この定数をもとに分かりやすく1〜10段階の体力度に置き換えて公表しています。

長野県山岳総合センターの資料では、「体力度2のルートに対して体力度6のルートはおよそ3倍のエネルギーを消費する」と説明されています。数字が2〜3違うだけでも、体力的な負担は大きく変わるということです。また、体力度3以下は目安として「日帰りも可能」とされていますが、これも人によっては日帰りが難しい場合があるとの注釈が付いています。

技術的難易度の見方:A〜Eで何が変わるのか

技術的難易度は、登山道の状態や求められる技術・能力によってA〜Eの5段階に分けられています。長野県山岳総合センターの資料をもとに整理すると、次のような目安です。

難易度 登山道の様子 求められる技術・能力
A よく整備された登山道 登山装備があれば歩ける
B 普通の登山道 登山経験・地図読みの基礎知識
C ハシゴ・くさり場がある ハシゴ・くさり場を通過できる技術
D 不安定で手を使ってバランスをとる場所がある バランス能力・ルートファインディング能力
E 厳しい岩稜が連続する 高度な判断力(人によってはロープが必要)

ポイントは、A〜Eは上位ランクほど下位ランクの要素をすべて含むという点です。たとえばCランクのルートを歩くには、Aで求められる登山装備、Bで求められる登山経験・地図読み能力に加えて、ハシゴ・くさり場を通過する技術が必要になります。また、C・D・Eランクは全身を使った強い動作が求められる場面があるため、A・Bのルートよりも高い体力(目安として8メッツ程度の運動に耐えられる体力)が必要とされています。

初心者が最初の1座を選ぶときの考え方

長野県山岳総合センターの資料では、初心者向けのステップアップ方法として次のように説明されています。

グレーディング表の左下(体力度が低く、技術的難易度がA)のルートから、右上(体力度が高く、技術的難易度が高い)のルートへと、徐々に経験を積み重ねてください。

つまり、最初の1座は体力度が低く、技術的難易度がAのルートから選ぶのが基本です。慣れてきたからといっていきなり体力度や難易度を大きく上げるのではなく、「同じランクの山を2〜3回経験してから次のランクに進む」ことが推奨されています。

「山のグレーディング」の体力度×技術的難易度マトリクス。初心者は体力度が低く技術的難易度Aのゾーンから始め、矢印の方向へ徐々にステップアップする体力度をステップアップしたい場合は、早歩きや坂道歩きなど全身持久力を高めるトレーニングを日頃から行うこと、技術的難易度をステップアップしたい場合は、経験者と一緒に登って経験を積むことも合わせて推奨されています。

一般的な目安として、初めての登山では往復3〜5時間程度のコースを選ぶと、体力的にも精神的にも余裕を持って歩きやすいと言われています。グレーディング表で体力度・難易度を確認したうえで、この行動時間の目安と照らし合わせて選ぶとよいでしょう。

グレーディング表はどこで確認できる?

グレーディングは都道府県ごとに公表されており、対象となる山・ルートも都道府県によって異なります。お住まいの地域や登りたい山がある都道府県の公式サイトで「(都道府県名) 山のグレーディング」と検索すると、一覧表やPDFが見つかります。長野県・群馬県・山梨県・静岡県・秋田県などが代表的な公表例です。

なお、グレーディング表に載っていない山だからといって危険というわけではありません。あくまで「主要な登山ルートの中から、事故が起きやすいものを選んで評価した」ものなので、掲載されていないルートも多くあります。表にない山を選ぶ場合は、ガイドブックや登山アプリのコースタイム表示などを参考にしてください。

注意:グレーディングは「無雪期・天気良好時」が前提

グレーディングを活用するうえで、必ず理解しておきたい注意点があります。長野県山岳総合センターの資料では、次のように明記されています。

  • グレーディングは無雪期・天気良好の条件で、ルート固有の地形的な特徴にのみ着目して評価したものである
  • 実際の登山では、気象条件・残雪の有無・体調・その他偶発的な要因など、グレーディングには反映されないリスクがある
  • そのため、体力度や難易度が低い山でも多くの遭難事故が起きている

つまり、グレーディングは「自分のレベルに合う候補を絞り込むための参考情報」であり、それだけで安全を保証するものではありません。山を選んだあとは、経験者に話を聞いたり、ガイドブックや山小屋のホームページで最新の状況を調べたりして、装備や日程に余裕を持った計画を立てることが大切です。この計画の立て方や下山連絡のルール決めについては、登山計画書(登山届)の書き方ガイドで詳しく解説しています。

まとめ

初心者が最初の山を選ぶときは、「なんとなく低山」で選ぶのではなく、都道府県が公表する「山のグレーディング」を使って、体力度が低く技術的難易度がAのルートから選ぶのが安全な第一歩です。慣れてきても、同じランクを2〜3回経験してから次のランクに進むことで、無理なくステップアップできます。ただしグレーディングは無雪期・天気良好時が前提の目安であることを忘れず、天候や体調を見ながら安全側に判断する姿勢を持ち続けましょう。

装備の揃え方は登山初心者に必要なものガイド、遭難・道迷いなどの安全対策は登山の安全対策完全ガイドもあわせてご覧ください。

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