導入
夏山では、午後になると積乱雲が発達し、雷に遭遇するリスクが高まります。登山の安全対策完全ガイドで紹介した熱中症・低体温症対策と並んで、雷は稜線上など逃げ場のない場所で遭遇すると命に関わるリスクです。この記事では、雷までの距離の測り方と、2026年1月に見直された最新の避難方法を解説します。
雷までの距離は「光と音の差」で計算できる
雷は光ってから音が聞こえるまでにタイムラグがあります。これを利用すると、おおよその距離を計算できます。
落雷地点までの距離(m) = 340(m/秒) × 光ってから音が聞こえるまでの時間(秒)
例えば、稲光が見えてから10秒後に「ゴロゴロ」と音が聞こえた場合、340×10=3400mで約3.4km先に落雷があったと分かります。3秒未満で音が聞こえた場合は、340×3=1020mで約1km以内とかなり近く、危険な状況です。
音は通常10kmくらいまでしか聞こえないとされています。稲光が見えても音が聞こえない場合は、40〜50km程度離れている可能性がありますが、雷雲は移動するため油断はできません。稲光が見えた時点で、行動を切り替える心づもりをしておきましょう。

稜線にいるときは「逃げる」が最優先
落雷対策の基本は「逃げる・隠れる・離れる」の3つです。
- 逃げる: 稜線・ピーク・尾根から一刻も早く標高を下げること。樹林帯まで下りるのが理想です
- 隠れる: 山小屋や自動車内が最も安全です。木の下で雨宿りするのは、後述する側撃のリスクがあるため避けましょう
- 離れる: 木や仲間から距離を取ります。落雷は人から人へも伝わることがあるため、仲間とは6m以上の間隔をあけるとよいとされています
事前に気象庁の「雷ナウキャスト」を確認しておくのもおすすめです。雷の激しさや可能性を1km四方の細かさで解析し、10分ごとに発表、1時間先まで予測してくれる無料の情報で、活動度2以上は落雷の危険が迫っている状況とされています。出発前や休憩中にチェックする習慣をつけましょう。
「雷しゃがみ」の推奨方針が見直された(2026年1月)
これまで「雷しゃがみ(姿勢を低くして両手で耳をふさぎ、かかとをつけてしゃがむ)」という対処法が広く紹介されてきましたが、雷対策の専門企業であるフランクリン・ジャパンは2026年1月、この推奨方針を見直しました。現在は「一刻も早い建物内への避難」を最優先とする方針に変わっています。
登山中は近くに建物がないことも多いため、この見直しをそのまま当てはめるのは難しい場面もありますが、山中では「なるべく姿勢を低くしながら、安全な場所への移動を続ける」ことが現実的な対応になります。避難がどうしても難しい場合に限り、耳をふさぎ足を閉じてしゃがむ姿勢が案内されていますが、腹ばいの姿勢は側撃を受けやすくなるため避けるべきとされています。
木や高い物から離れる距離も見直されている
「木の幹から2m以上離れ、45度以上の角度で見上げる範囲なら安全」という基準を目にすることがありますが、この記事では採用していません。フランクリン・ジャパンの最新の見解では、高い木の付近は側撃を受ける危険性が極めて高く、そもそも「保護範囲」という考え方自体が高い木には当てはまらないとされているためです。目安としては、高さ5m以上の物体からは4m以上の距離を取ることが推奨されています。
まとめ
- 雷までの距離は「340m/秒 × 光ってから音までの秒数」で概算できる。3秒未満なら約1km以内とかなり近い
- 稜線にいる場合は、まず標高を下げて樹林帯や山小屋を目指す「逃げる」が最優先
- 「雷しゃがみ」は2026年1月に推奨方針が見直され、建物内への避難が最優先とされるようになった
- 木からは4m以上離れる。腹ばいの姿勢は側撃のリスクがあるため避ける
登山の安全対策完全ガイド、登山計画書の書き方とあわせて、夏山シーズンは天候の急変にも備えておきましょう。

