
導入
「登山を始めてみたいけど、遭難とか事故が怖い」——そう感じている方は少なくないと思います。実際、山岳遭難のニュースを聞くと不安になりますよね。
ただ、遭難や事故の多くは、事前の準備と正しい知識があれば防げるものです。この記事では、登山前・登山中・下山後の時系列に沿って、初心者の方が知っておきたい安全対策を丁寧に解説します。あわせて、意外と情報が少ない「ケガをしたときの応急手当」と「いざというときの連絡方法」も具体的にまとめました。
不安を「知らないこと」から「備えられること」に変えていきましょう。
登山前にできる安全対策
登山計画を立てて、登山届を提出する
自分の体力に合ったコースを選び、コースタイム・難易度・水場の有無などを事前に調べておきましょう。あわせて「登山届(登山計画書)」を提出しておくと、万が一の際に捜索の手がかりになります。YAMAPなどの登山アプリからも提出できます。
天気予報をこまめに確認する
山の天気は平地より変わりやすく、特に午後は雷が発生しやすい傾向があります。前日だけでなく、当日の出発前にも天気予報を確認する習慣をつけましょう。
基本装備を準備する
登山靴・ザック・レインウェアの「三種の神器」をはじめとした基本装備は、安全に直結します。装備の選び方や予算目安は、登山初心者に必要なものガイドで詳しく解説しています。
体力づくりをしておく
普段からウォーキングや階段の上り下りなどで体力をつけておくと、疲労による転倒・滑落のリスクを減らせます。
登山中に気をつけたいこと
こまめに休憩し、水分・栄養を補給する
疲労がたまると判断力が落ち、事故につながりやすくなります。喉が渇く前に少しずつ水分をとり、行動食でこまめにエネルギーを補給しましょう。
道に迷ったら「引き返す」のが鉄則
道に迷ったと感じたら、まずその場で立ち止まり、地図やGPSアプリで現在地を確認しながら、分かるところまで来た道を引き返すのが基本の対処法です。不安なまま進み続けると、さらに迷って状況が悪化しやすいため、慌てずに戻ることを優先してください。
このとき絶対に避けたいのが、沢や谷筋へ下ってしまうことです。「下れば楽そう」「沢を辿れば人里に出そう」と思われがちですが、沢や谷は滝や急な崖につながっていることが多く、転落事故につながる危険な行動です。道に迷ったときは、下るのではなく、来た道を戻る・視界の開けた尾根を目指すことを意識してください。
天候が急変したら早めに判断する
雨や雷、風が強まってきたら、無理に先へ進まず、引き返す・山小屋に避難するなど早めの判断を心がけましょう。
下山時こそ油断しない
登山の事故は、実は下山時に多く発生しています。足腰に疲労がたまった状態での転倒・滑落が主な原因です。「あと少し」というところで気を緩めず、最後まで慎重に歩きましょう。
熱中症・低体温症への対処法
熱中症のサイン と対処
めまい、頭痛、吐き気、大量の汗などが熱中症のサインです。感じたら日陰で休み、衣服を緩めて体を冷やし、水分と塩分を補給してください。症状が改善しない場合は無理をせず下山を検討しましょう。
低体温症のサインと対処
震え、意識がぼんやりする、ろれつが回らないなどが低体温症のサインです。濡れた衣服を乾いたものに着替え、風を避けられる場所で保温してください。レイヤリング(重ね着)で汗や雨による体温低下を防ぐことが、そもそもの予防になります。
ケガをしたときの応急手当
登山中の捻挫や転倒によるケガへの対処は、意外と情報が少ないポイントです。基本的な応急手当を知っておきましょう。
捻挫をしたときの応急手当(RICE処置)
- Rest(安静): 無理に動かさず、その場で安静にする
- Ice(冷却): 保冷剤や冷たい水で患部を冷やす
- Compression(圧迫): 包帯やテーピングで軽く圧迫する
- Elevation(挙上): 患部を心臓より高い位置に上げる
応急手当をしたうえで、自力歩行が難しい場合は無理をせず、後述の方法で救助を要請してください。
擦り傷・切り傷の対応
傷口を清潔な水で洗い流し、消毒後にガーゼや絆創膏で保護します。出血が多い場合は、清潔な布で患部を強く圧迫して止血してください。
動けなくなったときの判断基準
「歩けるかどうか」「痛みが強くなっていないか」を基準に、無理に自力下山を続けず、早めに救助要請の判断をすることが大切です。迷ったときは「安全側」を選んでください。
遭難・緊急時の通報手順
いざというとき、どこに連絡すればいいか分からないと不安が大きくなります。事前に流れを知っておきましょう。
電話がつながる場合
道に迷った、ケガで動けないなど山岳での緊急事態は、110番(警察)・119番(消防)のどちらに通報しても構いません。山岳救助隊がある地域では110番、消防による救助体制が整っている地域では119番が対応することが多いですが、どちらにかけても情報は共有されるため、「どちらが正しいか」で迷って通報が遅れるより、まず速やかに連絡することを優先してください。オペレーターに「山岳遭難である」ことを伝え、現在地(登山アプリのGPS情報や目印になる地形)、人数、負傷の有無を落ち着いて伝えましょう。
電波が届かない場合
山の中では電波が入らないことも多くあります。少し高い場所や尾根に移動すると電波が回復することがあるので試してみてください。登山アプリの中には、電波が届く場所で家族や緊急連絡先に位置情報を共有できる機能があるものもあります。
一次情報での確認を推奨
通報先や手順は地域・状況によって細かく異なる場合があるため、この記事の内容に加えて、お住まいの地域や登山予定地の警察・自治体が発信している最新の遭難対策情報もあわせて確認することをおすすめします。
万が一に備える登山保険
遭難時に最も費用がかさむのが、捜索・救助にかかる費用です。民間ヘリコプターを利用すると1時間あたり数十万円かかるといわれ、捜索が長期化すると総額が100万円を超えるケースもあります。
登山保険に加入しておけば、こうした捜索・救助費用を補償でカバーできる場合があります。日帰りの低山であっても、万が一に備えて加入を検討する価値があるでしょう。
まとめ
登山の安全対策は、「登山前の準備」「登山中の判断」「もしものときの対処」の3つに分けて考えると分かりやすくなります。特に捻挫などのケガへの応急手当と、緊急時の通報手順は、知っているだけで気持ちの余裕が大きく変わります。
正しい知識を備えて、安心して登山を楽しんでください。

