導入
登山中の虫対策というと、蚊やブヨを防ぐためのものというイメージが強いかもしれません。しかし実は、マダニが媒介する感染症のリスクも見過ごせません。マダニ感染症の報告数は近年過去最多を記録しており、厚生労働省も対策を呼びかけています。この記事では、虫除け剤の有効成分の選び方と、虫除け剤だけに頼らないマダニ対策について解説します。
なぜマダニ対策が重要なのか
マダニに咬まれることで感染する病気には、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)、ダニ媒介脳炎、日本紅斑熱、つつが虫病、ライム病などがあります。なかでもSFTSは発熱・消化器症状・頭痛・筋肉痛・神経症状などが主な症状で、潜伏期は6〜14日程度とされ、重症化すると死亡することもある感染症です。草むらや藪漕ぎのある登山道では、マダニに咬まれるリスクが高まるため、虫除けと合わせた対策が欠かせません。
虫除け剤の選び方:ディートとイカリジンの違い
虫除け剤の有効成分には、主にディートとイカリジンの2種類があります。
- ディート: 日本で50年以上使用されてきた実績のある成分で、蚊・マダニ・ヤマビル・アブ・ブユなど幅広い害虫に効果がある。濃度が高いほど効果の持続時間が長くなる。ただし濃度に応じた年齢制限があり、濃度5〜12%程度は6か月未満は使用不可、6か月以上2歳未満は1日1回、2歳以上12歳未満は1日1〜3回まで。濃度30%程度の高濃度タイプは12歳未満には使用しない
- イカリジン: 比較的新しい成分で、年齢による使用制限がない。顔や手など肌の弱い部位にも使いやすい
登山で長時間行動する場合は、効果の持続時間が長いディートの高濃度タイプが選択肢になりますが、お子さんと一緒に登山をする場合や、年齢を問わず家族で使い回したい場合は、イカリジンタイプを選ぶと安心です。
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マダニ対策は虫除け剤だけでは不十分
マダニに咬まれないためには、虫除け剤に加えて服装の工夫も重要です。
- 長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を最小限にする
- 足を完全に覆う靴を履く(サンダルなどは避ける)
- 帽子・手袋を着用し、首にタオルを巻く
- シャツの裾はズボンの中に、ズボンの裾は靴下や靴の中に入れる

下山後の確認も忘れずに
屋外活動後は、上着や作業着を家の中に持ち込まないようにし、シャワーや入浴で吸血前のマダニを洗い流すことが推奨されています。マダニに咬まれやすい部位として、首・耳・わきの下・足の付け根・手首・膝の裏などが挙げられているため、入浴時にはこれらの部位を重点的に確認しましょう。
もし咬まれているマダニを見つけた場合、基本的には無理に自分で引き抜こうとせず、皮膚科など医療機関を受診することが推奨されています。指やピンセットでマダニの胴体を強くつまんだり、ねじったり、潰したりすると、感染性の体液が体内に押し戻されるおそれがあるためです。ただし登山中は、咬まれてすぐに医療機関を受診できないことも少なくありません。そうした場合は、マダニの胴体を絞らずに除去できる専用のツールを使い、皮膚にできるだけ近い部分をまっすぐ引き上げて取り除いたうえで、患部を消毒し、できるだけ早く医療機関を受診するようにしましょう。
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まとめ
- マダニはSFTSなど重症化する可能性がある感染症を媒介するため、虫除け剤だけに頼らない対策が必要
- 虫除け剤はディート(高濃度で持続時間が長いが年齢制限あり)とイカリジン(年齢制限なし)から、使う人や行動時間に合わせて選ぶ
- 長袖・長ズボン・足を覆う靴・帽子・手袋など、服装で肌の露出を減らすことも重要
- 下山後は入浴し、首・耳・わきの下・足の付け根・手首・膝の裏を中心にマダニの付着を確認する
登山のクマ対策|クマ撃退スプレーの選び方・熊鈴の選び方とあわせて、虫・野生生物の両面から登山中のリスクに備えておきましょう。

