導入
「登山には山岳保険が必要」とよく言われますが、遭難したら本当にお金がかかるのか、普段入っている保険では何が足りないのか、よく分からないという方も多いのではないでしょうか。登山計画書の書き方で紹介した下山連絡と同じく、山岳保険も「もしものとき」への備えの一つです。この記事では、救助費用の実態と、山岳保険の選び方を解説します。
警察・消防の救助は原則無料。では何が有料になるのか
まず知っておきたいのは、警察や消防による山岳救助は、費用が本人に請求されることが一般的にないという点です。救助活動の経費は公費でまかなわれているためです。
ただし例外もあります。埼玉県では条例により、県の防災ヘリによる救助に手数料が課されており、飛行5分ごとに8,000円がかかります。過去の平均救助時間は約1時間とされているため、単純計算すると次のようになります。
8,000円 × 12(5分単位、1時間=60分) = 約9.6万円
これはあくまで埼玉県の例外的なケースであり、全国一律の制度ではありませんが、一部自治体で有料化が進んでいることは知っておく価値があります。
一方で、確実に費用がかかるのが民間ヘリコプターや民間救助隊を頼った場合です。民間ヘリの運航費用は、小型ヘリで約65万円以上/時間、中型ヘリで約120万円以上/時間が目安とされています。さらに民間救助隊員は1日あたり数万円〜5万円程度以上かかり、捜索が複数日に及ぶと総額が数十万円以上になることもあります。

なぜ通常の傷害保険では足りないのか
「もう傷害保険に入っているから大丈夫」と思うかもしれませんが、注意が必要です。一般的な傷害保険では、ピッケルやアイゼンを使用するような登山が補償の対象外(免責)とされている場合があります。さらに、捜索・救助費用そのものは、通常の傷害保険では補償されないことが多いのです。
山岳保険は、こうした山岳登攀やクライミングも補償対象に含めるよう設計された専用の保険で、捜索・救助費用(レスキュー費用)を主な補償内容としています。
保険タイプの使い分け:短期 vs 年間
山岳保険には大きく分けて2つのタイプがあります。
- 短期タイプ(1日〜数日): 年に2〜3回程度の登山であれば短期タイプで十分。スマートフォンから当日申し込める手軽さも魅力
- 年間タイプ: 月に1回以上山に行くなら、短期プランをその都度契約するより割安になる傾向がある
自分の登山頻度に合わせて選びましょう。
補償額の目安
レスキュー費用の補償上限額は、保険によって100万円〜500万円以上までかなり幅があります。先ほど紹介した民間ヘリの費用相場(1時間で65万円〜120万円以上)を踏まえると、捜索が長引いた場合に備えて、上限額に余裕のあるプランを選んでおくと安心です。自分が登る山域や登山スタイルに見合った上限額かどうか、加入前に確認しておきましょう。
まとめ
- 警察・消防による救助は原則無料だが、埼玉県など一部自治体は例外的に有料化している
- 民間ヘリや民間救助隊を頼ると確実に費用がかかり、小型ヘリでも1時間65万円以上が目安
- 通常の傷害保険は捜索・救助費用を補償しないことが多いため、山岳保険で備える必要がある
- 登山頻度に応じて短期タイプ・年間タイプを使い分け、補償上限額にも余裕を持たせる
登山計画書の書き方、登山の安全対策完全ガイドとあわせて、万一に備えた準備をしておきましょう。

