導入
長野県編・群馬県編・山梨県編で紹介してきた都道府県公式「山のグレーディング」には、必ず「体力度(1〜10)」という数字がありました。この数字は感覚で決められているのではなく、「ルート定数」という計算式から導かれています。この記事では、その仕組みと自分で計算する方法を紹介します。
ルート定数とは何か
ルート定数(コース定数)は、登山の体力づくり完全ガイドでも紹介した鹿屋体育大学・山本正嘉教授が考案した指標です。山と溪谷オンラインの解説記事では、計算式が次のように示されています。
1.8×行動時間(h)+0.3×歩行距離(km)+10.0×登りの累積標高差+0.6×下りの標高差
NTT西日本のBiz Clipが公開している解説記事でも同じ係数(1.8/0.3/10.0/0.6)が示されており、複数の情報源で一致していることを確認しています。行動時間・歩行距離・登り/下りの標高差という4つの要素にそれぞれ重みをつけて合計することで、コースの体力的な厳しさを1つの数字に落とし込んでいます。

ルート定数の目安
同じ2つの情報源によると、ルート定数の値はおおよそ次のように解釈されます。
- 10前後: 初心者向き
- 20前後: 一般的な登山者向き
- 30前後: 日帰りでは健脚者向き
- 40以上: 1泊以上の計画が必要
長野・群馬・山梨編で見た「体力度1〜10」は、このルート定数をもとにランク分けされたものです。
消費エネルギーも計算できる
ルート定数のもう一つの使い方は、消費エネルギー(kcal)の計算です。「みやじま野遊び」の解説記事では、登山医学の研究(中原・萩原・山本、2006年)をもとに、次の計算例が紹介されています。
60kgの人が10kgのザックを背負い、6時間歩行した場合:(1.8×6.0+(0.3×6.0+10.0×1.18+0.6×1.18))×(60+10)≒1,760kcal
これは「ルート定数×(体重+ザック重量)」で消費エネルギーが求められるという考え方です。実際にこの数値を検算すると、ルート定数部分が約25.1、体重とザックの合計70kgをかけると約1,758kcalとなり、記事の数値とほぼ一致しました。
テント泊縦走の始め方で紹介したとおり、テント泊装備は日帰りよりザックが重くなります。この式からもわかるように、ザック重量が増えるほど同じコースでも消費エネルギーは大きくなります。登山の行動食完全ガイドで紹介した「こまめな補給」は、こうした消費エネルギーの増加を踏まえても理にかなった対策です。
自分のコースで計算してみる
多くの登山地図アプリやコースタイム表には、行動時間・距離・累積標高差の情報が載っています。この4つの数字がわかれば、上記の計算式に当てはめてルート定数を求めることができます。計画段階で計算しておけば、「このコースは健脚者向きだから、体力づくりをもう少ししてから挑戦しよう」といった判断がしやすくなります。
まとめ
都道府県公式「山のグレーディング」の体力度は、鹿屋体育大学・山本正嘉教授が考案した「ルート定数」という計算式から導かれています。行動時間・歩行距離・登り下りの標高差という具体的な数字から、体力的な厳しさも消費エネルギーも計算できることを知っておくと、山選びの解像度がぐっと上がります。

