導入
「登山に綿(コットン)のTシャツはNG」とよく言われますが、なぜダメなのか、化学繊維とメリノウールのどちらを選べばいいのか、判断基準が分からないという方は多いのではないでしょうか。ベースレイヤー(肌に直接触れるインナー)は、ミドルレイヤーやレインウェアと並ぶ登山の3層構造(レイヤリング)の土台であり、汗冷え対策の要になる部分です。
この記事では、日本山岳ガイド協会の登山ガイド資格を持つ上田洋平氏監修の情報をもとに、コットンが危険とされる理由のメカニズムと、化学繊維・メリノウールそれぞれの特性、季節・用途別の使い分けを解説します。
なぜコットン(綿)のインナーは登山でNGなのか
コットンは天然素材で肌触りがよく吸湿性も良いのですが、保水力があって乾きにくいという性質があります。そのため、汗を吸って濡れたままの状態が長時間続いてしまいます。
濡れた衣類が乾くとき、水分が液体から気体に変わる際に周囲の熱を奪う「気化熱」という現象が起きます。濡れたウェアを着たまま風に当たると、この気化熱によって体温がどんどん奪われていきます。これが「汗冷え」であり、環境によっては低体温症を引き起こすきっかけにもなるとされています。夏山でも標高が高い場所や稜線では気温が下がりやすいため、思っている以上にリスクがある点に注意が必要です。
化学繊維とメリノウール、それぞれの特性
コットンの代わりに登山用インナーとして使われるのが、化学繊維(ポリエステルなど)とメリノウールです。それぞれ得意なことが異なるため、「どちらが優れているか」ではなく「トレードオフ」として理解しておくとよいでしょう。
化学繊維(ポリエステルなど):とにかく乾きが速い
肌表面の水分を繊維の表面で素早く発散させる性質があり、速乾性に優れています。軽量で耐久性もあり、比較的安価に入手できるのも利点です。一方で、速く乾く過程で気化熱による体温低下が起きやすく、風のある稜線などでは汗冷えを感じやすい場面もあります。また、化学繊維は雑菌が繁殖しやすくニオイの原因になりやすい傾向がある点もデメリットとして挙げられます。
メリノウール:ゆっくり乾いて汗冷えしにくい
優れた吸汗性を持ちながら、濡れても保温性を保つ性質があるため、化繊に比べて汗冷えを感じにくいとされています。さらに天然の抗菌作用があり、防臭性が高いことも大きな特徴です。数日間の縦走で着替えの回数を減らしたい場合にも向いています。デメリットは、化繊に比べて乾くのに時間がかかることと、価格が高めであることです。
混紡タイプ:バランス型
化学繊維とメリノウールを混ぜた混紡タイプは、速乾性と保温性のバランスに優れています。どちらか一方の特性に絞りきれない場合の選択肢として検討する価値があります。
おすすめのベースレイヤー(PR)
ミレー(Millet) FLAG TS(半袖ベースレイヤー) — 速乾性を重視した化学繊維モデル
Kyowooool 100%メリノウールTシャツ(半袖ベースレイヤー) — 汗冷え・防臭を重視したメリノウールモデル

季節・用途による使い分けの目安
- 夏の日帰り登山・汗をかきやすい場面: 速乾性とUVカット機能を重視し、化学繊維を選ぶ
- 気温が下がる場面、汗冷えのリスクを避けたい縦走・秋冬シーズン: 中厚手・裏起毛タイプのメリノウールや混紡タイプを選ぶ
これはあくまで一般的な目安であり、個人の発汗量や当日の気温によって最適な選択は変わります。心配な場合は、行動中に着替えられるよう予備のベースレイヤーを持参するのも一つの方法です。
まとめ
登山用インナーにコットンが向かないのは、「保水力があり乾きにくい→気化熱で体温が奪われる→汗冷え・低体温症のリスク」という明確なメカニズムがあるためです。化学繊維は速乾性に優れる一方で汗冷えや匂いの面で劣り、メリノウールは汗冷えしにくく防臭性も高い一方で乾きが遅く価格が高いというトレードオフがあります。季節や行程に合わせて選び分けましょう。
ミドルレイヤーの選び方、レインウェアの選び方とあわせて、ベース・ミドル・アウターの3層それぞれに合った素材を選び、快適な登山を楽しんでください。発汗量が増える場面に備えた体力づくりもあわせてご覧ください。

