導入
登山初心者の山の選び方では、都道府県が公表する「山のグレーディング」という指標を使えば、体力度が低く技術的難易度がAのルートから始めるのが安全だと解説しました。ただ、「では具体的にどの山に登ればいいの?」という疑問には、まだ答えていませんでした。
この記事では、長野県山岳総合センターが公表している「信州 山のグレーディング」一覧表(2014年7月27日版、全100ルート収録)から、技術的難易度がAのルートを全件ピックアップし、体力度別に紹介します。個人の体験談ではなく、公式データに基づく候補として参考にしてください。
「信州 山のグレーディング」一覧表とは
長野県山岳総合センターが公表している一覧表は、長野県内の主要な登山ルート100件について、山域・体力度(1〜10段階)・技術的難易度(A〜E)・標高・行動時間(コースタイム)・ルート長・累積標高差を一覧化した公式資料です。鹿屋体育大学の山本正嘉教授の研究成果(体力づくりの記事で紹介した教授と同一人物です)をもとに作成され、長野県山岳遭難防止対策協会が監修しています。
この100件のうち、技術的難易度がAのルートは14件です。以下、体力度が低い順に紹介します。
体力度1:最も体力的な負担が少ないルート
| 山名(コース) | 山域 | 山頂標高 | 登山口標高 | 合計コースタイム | ルート長 |
|---|---|---|---|---|---|
| 大渚山(湯峠) | その他 | 1,566m | 1,285m | 2.3時間 | 3.3km |
| 北横岳(ロープウェイ) | 八ヶ岳 | 2,480m | 2,230m(ロープウェイ利用) | 2.2時間 | 4.2km |
| 湯ノ丸山(地蔵峠) | その他 | 2,101m | 1,732m | 2.3時間 | 4.2km |
いずれもコースタイムは2時間台と短く、登山口の標高がもともと高い(またはロープウェイで標高を稼げる)ため、実際に歩いて登る標高差が小さいのが特徴です。
体力度2:高尾山と同じランクのルート
| 山名(コース) | 山域 | 山頂標高 | 登山口標高 | 合計コースタイム | ルート長 |
|---|---|---|---|---|---|
| 烏帽子岳(地蔵峠) | その他 | 2,066m | 1,732m | 3.8時間 | 8.2km |
| 黒斑山(車坂峠) | その他 | 2,404m | 1,973m | 3.6時間 | 5.2km |
| 蓼科山(大河原峠) | 八ヶ岳 | 2,530m | 2,090m | 4.0時間 | 5.4km |
| 蓼科山(七合目登山口) | 八ヶ岳 | 2,530m | 1,900m | 3.8時間 | 4.9km |
| 根子岳(菅平牧場) | その他 | 2,207m | 1,590m | 3.7時間 | 5.1km |
興味深いことに、この一覧表には「県外」の参考掲載として東京都の高尾山(表参道・琵琶滝の2ルート、体力度2・技術的難易度A、山頂標高599m)が含まれています。多くの方が知っている高尾山を基準にすると、上記の烏帽子岳・黒斑山・蓼科山・根子岳も「高尾山と同じくらいの体力的な負担」とイメージしやすくなります。
体力度3:同ランクに慣れてきたら次のステップ
登山初心者の山の選び方で紹介したとおり、長野県山岳総合センターは「同じランクの山を2〜3回経験してから次のランクに進む」ことを推奨しています。体力度1〜2のルートに慣れてきたら、次のステップとして以下も選択肢に入ってきます。
| 山名(コース) | 山域 | 山頂標高 | 登山口標高 | 合計コースタイム | ルート長 |
|---|---|---|---|---|---|
| 硫黄岳(桜平) | 八ヶ岳 | 2,760m | 1,890m | 4.4時間 | 9.4km |
| 硫黄岳(美濃戸・北沢) | 八ヶ岳 | 2,760m | 1,690m | 7.3時間 | 13.0km |
| 天狗岳(渋ノ湯) | 八ヶ岳 | 2,640m(東天狗岳) | 1,840m | 6.4時間 | 9.1km |
体力度2までのルートに比べてコースタイムが長くなるものもあるため、体力づくりの記事で紹介したトレーニングも並行して進めておくと安心です。

注意点:あくまで公式データに基づく候補の一つ
- この一覧表は2014年7月27日版であり、登山道の状況(崩落・通行止め等)は年々変化します。実際に訪れる前は、必ず最新の登山道情報を各山域の公式サイトや山小屋のホームページで確認してください
- この一覧表に載っている山だけが初心者向けというわけではありません。あくまで長野県内の主要ルートを対象に評価したものであり、掲載されていない山の中にも初心者向けのルートは数多くあります
- 登山初心者の山の選び方でも解説したとおり、グレーディングは無雪期・天気良好時が前提の評価です。体力度・技術的難易度が低いルートでも、悪天候や体調不良によって事故は起きています。天候と体調を見ながら、安全側に判断する姿勢を忘れないでください
- 長野県以外の地域にお住まいの方、他地域の山を検討したい方は、群馬県・山梨県・静岡県・秋田県なども同様の「山のグレーディング」一覧表を公表しています。お住まいの地域や登りたい山がある都道府県のサイトで「(都道府県名) 山のグレーディング」と検索し、同じ考え方(技術的難易度A、体力度の低い順)で確認してみてください
まとめ
長野県山岳総合センターの公式一覧表によると、技術的難易度Aのルートは全100件中14件です。体力度1の大渚山・北横岳・湯ノ丸山から始め、高尾山と同じ体力度2の烏帽子岳・黒斑山・蓼科山・根子岳へ、そして慣れてきたら体力度3の硫黄岳・天狗岳へとステップアップしていくのが、公式データに基づいた無理のない進み方です。
装備の揃え方は登山初心者に必要なものガイド、無理なく体力をつける方法は登山の体力づくり完全ガイドもあわせてご覧ください。

