登山の読図・コンパスの使い方基礎|遭難原因No.1「道迷い」を防ぐ地図の読み方

技術・トレーニング

導入

登山アプリのGPS機能は便利ですが、電池切れや電波不良、故障のリスクがあります。そんなときに頼りになるのが、紙の地図とコンパスを使った「読図」の技術です。この記事では、なぜ読図が重要なのかを統計データで確認したうえで、地形図の磁北線の引き方とコンパスの基本的な使い方を解説します。

遭難原因の1位は「道迷い」

警察庁の統計によると、2025年の山岳遭難者数は3,623人で過去最多を記録しました。遭難件数は3,122件、死者・行方不明者は332人、負傷者は1,480人にのぼります。

気になる遭難の原因別割合を見ると、次のようになっています。

警察庁2025年統計に基づく山岳遭難の原因別割合。道迷いが30.9%で最多、次いで転倒19.2%、滑落17.3%、疲労9.8%、病気8.1%と続く

道迷いが30.9%と最も多く、2位の転倒(19.2%)を大きく引き離しています。滑落(17.3%)・疲労(9.8%)・病気(8.1%)と続きますが、単独の原因としては道迷いが突出して多いことが分かります。つまり、読図の技術を身につけることは、登山の安全対策として最も効果が見込める分野の一つだといえます。

地形図の「磁北線」を理解する

読図の基本となるのが、国土地理院発行の2万5千分の1地形図です。ここで押さえておきたいのが、地図上の北(真北)とコンパスが指す北(磁北)は同じ方向を指していないという点です。このズレを「西偏」と呼びます。

西偏の角度は地域によって異なります。たとえば宗谷岬(日本最北端)では西偏10度20分、沖ノ鳥島(日本最南端)では西偏3度10分というように差があるため、「本州なら何度」と一律に覚えるのではなく、使用する地形図の欄外に記載されている「西偏◯度◯分」という数値を必ず確認してください。

この角度をもとに、地図上に磁北線(磁北の方向を示す線)を書き込んでおくと、コンパスと組み合わせて使いやすくなります。2万5千分の1地形図の場合、磁北線を4cm間隔で引くと、実際の距離のちょうど1km間隔になるため、距離の目安としても分かりやすくなります。

コンパスの基本的な使い方

磁北線を引いた地図とコンパスがあれば、次の手順で進むべき方向を確認できます。

  1. 地図上で現在地から目的地までを結ぶ線に、コンパスの長辺(進行線側)を合わせる
  2. コンパスのダイヤルを回し、ダイヤル内の導線が地図上の磁北線と平行になるようにセットする
  3. コンパスを地図から離し、進行線が自分の体の前にくるように持つ
  4. その場で体の向きを回転させ、コンパスの磁針と、ダイヤル内の導線がぴったり重なる向きを探す
  5. 磁針と導線が重なったとき、進行線が指す方向が目的地への進むべき方向になる

文章だけだと分かりにくい部分もあるため、実際に使う前には、経験者と一緒に練習するか、読図講習会などで実地に学んでおくと安心です。

スマホの地図アプリとの使い分け

スマホの登山地図アプリは、現在地表示が手軽で非常に便利です。登山計画書の書き方で紹介した「コンパスアプリ」も、スマホの機能を使った便利な手段の一つです。ただし、電池切れ・端末の故障・電波が届かない場所での不具合といったリスクもあるため、紙の地形図と実物のコンパスも必ず携行し、両方を併用できるようにしておくことをおすすめします。アプリはあくまで補助と考え、いざというときに自分の力で現在地・方角を確認できる読図の技術を身につけておくと安心です。

まとめ

警察庁の2025年統計では、道迷いが遭難原因の30.9%を占め、他のどの原因よりも多くなっています。読図の基本は、地形図に記載された西偏の角度を確認して磁北線を引き、コンパスと組み合わせて現在地から目的地への方向を確認することです。スマホの地図アプリと紙の地図・コンパスを併用し、道迷いのリスクを減らしていきましょう。

安全対策全般については登山の安全対策完全ガイド、下山連絡のルール決めは登山計画書の書き方もあわせてご覧ください。

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